ちょっと良いデジカメを購入すると、誰もが一度は滝や噴水等の水が糸を引くように流れている写真や、冒頭の花火が沢山打ちあがっている写真などを撮ってみたいと思われるのではないでしょうか。
目で見ているものとは全く違う世界を写し取れることも、カメラの醍醐味の一つだと思います。
設定自体は非常にシンプルですので、簡単なポイントと作例をご紹介していきたいと思います。
スローシャッターの表現を覚えると、よりカメラが楽しくなると思いますよ!
動きのある写真を撮るには
シャッタースピードを決める
まずカメラ側の設定で、第一に自分で決めなければいけないことは「シャッタースピード」です。
シャッタースピードはシャッターを開けて光を取り込む時間のことで、例えば10秒にした場合は、10秒間の間に動いている物はブレて残像のように写り(速い動きの場合は消えることもあります)、止まっている建物等は動かず目に見たままの状態で写真として記録することができます。
なので、自分がメインで写したい物の動きをどれくらいのスピードで捉えるのが適切なのか、ということを見極めていく必要があります。
これは実際に色々なシャッタースピードで試して撮って経験を積んだり、自分が撮りたいイメージの写真を見つけて、その写真のシャッタースピードが記載されていればそれを見て参考にして、自分で感覚を身に着けていくしかないと思います。
この記事の作例では、撮影設定と使用機材を記憶の限り記載していきますので、ご参考になればと思います。
※記事が予想以上に長くなってしまいましたので、作例編は別途まとめることにしました。
ちなみに、具体的な定義はわかりませんが、遅いシャッタースピード(1秒以上くらい?)のことを「スローシャッター」や「長時間露光(長秒露光)」と言ったりします。
シャッタースピード以外の撮影設定
カメラの撮影設定がよくわからない、あまり煩雑なことをしたくないという方は、とりあえずは"シャッタースピード優先モード"(SONYでいうとSモード)でシャッタースピードだけを自分で決めて撮ってみましょう。
カメラの方で自動で明るさを調整して撮ってくれます(露出設定(±0とか±1のように設定できるやつ)については割愛します)。
ただし、写真が明るく(全体的に白っぽく)写りすぎてしまうという場合には、本項下側の注意書きを読んでみてください。
自分でF値やISOも設定して明るさを調整したい、という方は"マニュアルモード"(Mモード)を使ってみましょう。
シャッタースピードを長くすればする程光を取り込む量が増えるので、写真が明るくなってしまう要素が強くなってしまいます。
なので、F値を大きく(絞りを絞る)したり、ISO感度を低くする等して、写真の明るさ(露出)が適正になるようバランスを取って設定する必要があります。
※F値やISO、露出って何?という方は、是非下記の記事をご覧ください。なんとなくイメージできるようになると思います。
撮るために必要な道具
NDフィルター
先ほど説明したばかりですが、レンズに付けるサングラスのようなもので、写真が明るく写りすぎてしまう時に使用すると光の量を減らしてくれ、適正な明るさで写真を撮ることができます。
ND2、ND4、8、16、64、100...1000....等様々な数字があり、"1/数字"分光の量を減らしてくれる(1/2、1/4...)ので、数字が大きいほどより暗くなります。
NDを付けることによって変動するシャッタースピードは、NDの数字をシャッタースピードと掛け算すれば求められます。
(例)F値、ISOを固定して、NDを付けずに1/100のシャッタースピードの場合、ND100を付ける場合は1秒、ND4を付ける場合は1/25秒に設定して撮ると同じ明るさの写真が撮れます。
※詳細は、フィルターメーカーのケンコートキナーのサイトに詳しくあったので、そちらを見るとわかりやすいかもしれません。
使用するレンズの太さによってフィルター径が様々有り、そのサイズに合わせた各サイズのフィルターが販売されています。
フィルター径が大きくなる程、ガラスが大きくなるので当然値段が上がります。(82mm等の大口径になると1枚1万円前後する物もあるなど、複数種類買うのはかなりしんどくなってきます。)
複数種類のフィルターを買い揃えることを想定する場合は、レンズのフィルター径も視野に入れて検討されるのもいいかもしれません。
私はレンズを追加購入するたびにフィルター径が異なり、現在非常に困っております(笑)
ちなみに"ステップアップリング"・"ステップダウンリング"という、フィルター径が異なるレンズにもフィルターを取り付けられるようになるアダプタも販売されています。このような商品を使い、フィルターを上手に使いまわすという方法も有りだと思います。
また、フィルターは重ね付けすることもできます。
重ね付けした場合は、NDの数字を掛け算した分の1だけ光を減らしてくれます。
(例)ND2とND4を重ねた場合はND8、ND2とND100を重ねた場合はND200相当となる。
ちなみに、重ね付けする際は、数字が小さい物をレンズ側に、数字が大きい物を被写体側に付けた方が光の反射量が減らせて良いそうです。
また、特に超広角レンズの場合に起こりやすいですが、重ね付けする際はケラレ(フィルター枠の写り込み)に注意が必要です。
私の経験では、TAMRONのA046(17-28mm F2.8)の焦点距離17mm使用時にフィルター2枚(この時は保護フィルターとPLフィルター)を重ねたところケラレが発生しました。
写真の四隅がケラレているのがわかるかと思います。保護フィルターを外し忘れた私のミスです・・・。
逆に、SEL55F18Z(焦点距離55mm)では、フィルターを3枚(PLフィルター、ND16、ND100)重ねてもケラレなかった記憶があります。
初めてNDを買われる方は、ND8かND16くらいが効果もわかりやすく、かつ暗くなりすぎず扱いやすいので個人的にはおすすめかと思います。
私は最初はND16を購入しました。昼間に川の流れを写したり(シャッタースピード1~4秒くらい)、夜間花火を撮る(シャッタースピード1分前後)のに重宝しています。
※重ね付けも考慮すると薄型の物を選んでおくと安心かと思います。
また、昼間に雲の動きを出す為に1分以上のシャッタースピードにしたい、という場面等にはND100やND1000等が必要になってきます。
私はND100とND1000を所有していますが、ND100の方が使い勝手が良い印象です。
ND1000を使うよりも、ND100とND16を重ねてND1600相当で使えばいいかなという場面の方が多かったです。
ただし、前述のとおり超広角レンズで重ね付けができない場合にはND1000の出番もあるかもしれません。
※ND100以上には薄型の商品が無さそうです。
フィルター径49mmの場合には、NDフィルターも1枚2,000~3,000円で購入できるので色々試してみるのもいいと思います。
そういう意味でも"SEL55F18Z"というレンズはつくづく良いレンズだなと思います。後述しますが重量も軽いので三脚も安い物で済みます。
三脚
数秒から長い時は数分間もシャッターを開きっ放しにしますので、その間カメラが動いたり揺れないよう、三脚を使うことがほぼ必須となります。
私は三脚は二種類しか使ったことが無く、あまり詳しくどのような三脚が良いとは説明できないのですが、自分がこの三脚でこういう写真を実際に撮ったということだけ示していこうと思います。
K&F Concept TC2335(軽いレンズの時用)
初めて購入した三脚と雲台です。
とにかく持ち運び易さ重視(1kg未満、縮長34.5cm)で購入しました。
三脚はブレない写真を撮るための物なので、良い三脚を調べると、どうしてもパイプ径が太く、そこそこ重い物がおすすめになってしまうようです。
軽さを重視してブレた写真しか撮れなかったら本末転倒ですものね。
ですが、私の実体験で申しますと、カメラがSONYの"α7Ⅲ"(重量約650g)とレンズもSONYの"SEL55F18Z"(重量約281g)の合計約931gの組み合わせにおいては、2分以上のシャッタースピードでもこの三脚でブレることなく撮れています。
※カメラとレンズの重心も重要だと思いますので、このレンズが短いこともプラスになっているかもしれません。
使用NDについては記憶が曖昧で申し訳ございませんが、それ以外については間違いないです。
なお、TC2335に最初から付属していた雲台は、作りがちゃっちすぎて、カメラも全然固定できず役に立たなかったので、リンクにあるTRIPLE TREEの雲台を別途購入して使っておりました。
この雲台も、α7ⅢとSEL55F18Zの組み合わせまではギリギリ使えなくもないという感想ですので、後述する違う雲台を所有している今となっては、正直あまりおすすめできません。
具体的には、α7Ⅲと"SEL135F18GM"(重さ約950g)の合計約1.6kgの組み合わせで使用した際に、構図を決めて雲台を固定しても手を離した瞬間に若干動いてしまい、なかなか理想の構図で固定することができずにフラストレーションが溜まったことから、よりしっかりした雲台や三脚を購入する決意をしました。
なので、いずれ重めのレンズを購入する可能性がある方は、先を見据えてそれなりの三脚と雲台を購入される方がお勧めかなと思います。
※三脚は持ち運び重視で軽い物を、というのもありかもしれませんが、雲台については容易に付け外し可能で複数の三脚に使いまわしできますし、そこまで大きい物でなくても、それなりの固定力を持った雲台もありますので、特に雲台については初めからそれなりの物を購入するのがお勧めです。
Leofoto LS-284CLin(現在使っている三脚)とSIRUI K-20X
上記の"SEL135F18GM"(約950g)のレンズ購入を機に購入した三脚です。
この三脚を購入する時には、既にいずれ"SEL100400GM"(約1,395g)という望遠ズームレンズを購入することを視野に入れていたので、そのレンズでもなんとかブレずに撮影できそうな物の中で、できるだけ軽量な物というコンセプトで三脚と雲台を選びました。
今の所、その目標は達成できています。
※私は楽天のスーパーセール時に購入しました。
※固定力に定評の有る雲台の中では、かなり安価な方だと思います。
ちなみに、これらの組み合わせでもSEL135F18GMで使用した場合には、カメラの重心位置がレンズ側に来てしまい、バランスが悪く、強風時に十数秒のシャッタースピードで撮った時にブレブレだったことがあります(SEL100400GMには三脚座があるので、意外と安定します)。
なので下記記事で紹介しているロングプレートという物を使ってバランスを取ることで、SEL135F18GMでもブレずに安定した写真を撮れるようにしました。
更に言うと、SEL100400GMの三脚座も付属品ではなく社外品の物を購入して使っています。詳しくは下記をご覧ください。
レリーズ(リモコン)
レリーズ(リモコン)は、最近の機種ですとスマホのアプリや、セルフタイマーを使って撮ることで代用できますので、必須ではありません。
要は、折角カメラを三脚に固定していても、シャッターボタンを押す振動がカメラに加わってしまい、そのせいでブレた写真になってしまうことを防ぐことが目的です。
ひとつ例をお見せします。
上が一応の成功例です。次にお見せするのが失敗例です。
これは、実態はシャッターを押す瞬間に設定ミス(F値が小さいのでシャッタースピードも短い)していることに気づき、露光中でも途中で止められないかなと思い雑にシャッターを押しまくったように記憶しています(笑)
普通にシャッターボタンを押してブレてしまったものではないので、本項の趣旨とはズレていますが、極端な場合にはこのようになる可能性があると思ってご理解いただければと思います。
このようなことを防ぐために、レリーズやアプリ、セルフタイマーを使います。
ちなみにレリーズは必須ではないと言いましたが、有れば便利ですよ。
私が所有しているのは、α7Ⅲに対応しているBluetoothの純正レリーズですが、スマホのアプリと違って画面を見ずに物理ボタンでシャッターを押せるというのはやはり楽です。
寒い時などはポケットに手を入れたままシャッターを切ることもできますしね。
※下記リンクの商品は新しめの機種にしか対応していませんので、対応機種にご注意ください。
撮影時のポイント
今までと若干繰り返しになってしまう部分もありますが、ブレをなるべく防ぐための撮影設定等をご紹介します。
- 手ブレ補正機能をオフにする
- サイレントシャッターを使う(メカシャッターではなく電子シャッターを使う)
- 2秒セルフタイマーを使う(レリーズやアプリ不使用の場合)
- シャッタースピードBULB設定を使う
- 構図を決めてピント合わせをしてからNDフィルターを取り付ける
- 撮影中(露光中)は不要な振動を与えないよう、動き回ったりしない。
こんなところでしょうか。
手ブレ補正機能は、三脚等を使用した微細なブレですと、過剰にブレに反応してしまったり、誤作動を起こしてしまい、逆効果になってしまうこともあるようなので、三脚使用時はオフにするのがセオリーのようです。
サイレントシャッター(電子シャッター)機能が付いていれば、メカシャッター作動時の振動も抑えられるのでよりブレが発生する要素を抑えられます(ただし、機種によりローリングシャッター歪みという現象が発生します。詳しくは割愛します)。
セルフタイマーは前述のとおりです。大体のカメラには短い秒数のセルフタイマーが付いていると思うので、それを使用しましょう。
カメラの使い方を全く知らなかった頃は、こんな短い秒数何に使うんだと思っていましたが、この為にあったんですね。
シャッタースピード"BULB"というのは、シャッターボタンを一度押し、再びシャッターボタンを押すまで露光し続ける撮影のことです。
SONYのα7Ⅲでは、普通に設定できる最長シャッタースピードが30秒までなので、それ以上長いシャッターを切りたい時や、花火のように打ちあがりから消えるまで何秒かかるかわからないような撮影の時に使用しています。
構図を決める前やピントを合わせる前にNDフィルターを付けてしまうと、画面が真っ暗になり、構図が見えなかったりAFが上手く作動しないこともありますので事前に合わせた方が良いと思います(実際にはめんどくさがって付けたまま何となくで済ましちゃうことも私はよくしますが)。
続き(作例)は次の記事で
説明だけで予想以上に長くなってしまいましたので、今回は以上となります。
次回に実際の作例とその時の使用機材、撮影設定を説明しながらご紹介していければと思っております。
※本記事の作例は、全てこちらのカメラで撮影しました。
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