高級コンパクトデジカメ以上のカメラになってくると、一般的な画像データである"JPEG"だけではなく"RAW"という記録形式で保存できるようになります。
私自身はRAWの存在自体は高級コンデジを買った当初から知っていましたが、実際にRAWで保存、現像するようになったのは、購入後数年経ってからでした。
ですが、RAW現像をやってみた瞬間、自分のイメージどおりに写真を仕上げられるようになり、写真が物凄く楽しくなり、気づいたらフルサイズ一眼カメラを購入するまでになってしまいました。
「RAW現像って何?」という方や、知っているけどやったことが無いという方向けに、基本的な使い方と、何となくこんなことができるんだな、ということを伝えられたらいいなと思います。
【大前提】写真=真実ではない
何を当たり前のことを、と思う方も大勢いるかと思いますが、私は写真をちゃんと撮るようになるまで割と本気で写真が真実だと思っておりました。
今時は物心ついた時から写真が身近にありますし、自分が記憶もない頃の景色も残っていますからね。
言葉も「真実を写す」と書きますから、私は結構、自分の見た記憶、イメージは写真と違ったんだけど、写真がこうなんだから、写真が正しいのだろう、と自然と思ってしまうことが多々ありました。
ですが、カメラにハマってレンズの特性等を知り、使う機材によって同じ被写体でも全然違う写り方をするんだなとはっきりと認識しました。
鼻の長さとか全然違ってきますよね。でも以前の私はこれが人間の写真とかだと、この写真だと写真映り悪いなあ、で済ませていたんです。それくらい勝手に写真が真実だと刷り込まれていました(笑)
写真に写っている物が決して真実ではないと認識したうえで、もう一つ大事なことが、
カメラより、人間の目(脳)の性能の方が、ずっと優れている
ということです。
例夕日が綺麗な景色の場合
人の目でしたら、夕日と目の前にある物や人など、どちらも特に不自由なく見ることができるかと思います。
ですが、その景色をカメラで撮ろうとしてみます。
すると、夕日を目で見たオレンジ色になるように撮ると、人が真っ暗になってしまい、
逆に、人が暗くならないように撮ると、空が真っ白になってしまう。
このような経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
※夕焼けと被写体の綺麗な撮り方の記事作成しました。
上記のように、カメラ任せに写真を撮っていると、自分が見たイメージどおりに撮ることには限界が有るということがわかってきます。
それを少しでも解決し、出来る限り自分のイメージしたとおりの写真にする方法が、RAWで記録し、自分でRAW現像をしていく、という方法になります。
RAWについて
冒頭にも述べましたが、ある程度以上のランクのデジカメでは、記録保存方式を"JPEG"や"RAW"等と設定できるようになります。
RAWとは
RAWは「生(なま)」という意味です。カメラが捉えた情報そのままの物で、データ量が豊富にあります。
料理に例えるならば食材の状態で、まだ何も加工、味付けがされていません。
このままでは、一般的な画像データですらないので、普通の写真ビューワーソフトやアプリでは開くことすらできません。
なので、専用のRAW現像ソフトに取り込み、現像し、最終的にJPEG等の画像データにしていく必要があります。
カメラで記録するJPEGとは
カメラで撮影時にJPEGで保存する、というのは、云わばシャッターを切った直後にカメラ側でRAW現像をしているということです。
カメラでシーンセレクト(風景モードとかビビットとか)みたいなモードに設定するというのは、現像の傾向を設定しているというようなものです。
料理に例えると、調理済みの出来上がった食べ物という状態です。
余分な物は切られて捨てられて、既に味付けも済まされていますので、自分で違う料理にしたいと思った時に苦労します。強引に味付けを変えることになるので、どこか破綻するところが出てくる時があるのです。
※JPEGでも同じ現像ソフトを使って、一応補正をすることはできますが、上記の通り、"許容範囲・対応力"が変わってきます。
RAWのメリット
とにかく自分の好みやイメージどおりに表現ができます。機能が多すぎて、また奥が深すぎて、まだまだ私も全然使いこなせていません。
白潰れ、黒潰れしていなければ、かなり明るく、または暗く写ってしまっている部分も好みの明るさに調節できますので、撮影時にもし上手く撮れなくても、結構な確率で救済できます。
また、一度現像し終わっても、しばらく期間をおいてから見直した際に、その時の気分に応じてまた違った表現で現像が可能だったりと、お気に入りの写真を何度も楽しむことができます。
RAWデータを弄るようになって、フルサイズ機のRAWデータの豊富さに気づきました(私の場合、比較対象が1型のコンデジRX100M5Aなので尚更でした。)。センサーサイズが大きいほど、醍醐味が味わえるのかもしれませんね。
どれくらい調整できるものなのかは後程の実例で!
RAWのデメリット
デメリットの方が、簡単に箇条書きできてしまいます(笑)
- RAW現像ソフトが必要(無料、有料ソフト共にあり)
- 1枚ごとのデータ容量が大きい
- 一々現像するのが面倒くさく感じる時がある
- やれる事が多すぎて、凝りだしたらキリが無い
- 失敗写真でも救済できると思い、撮影時の設定が雑になりがち
手間と時間はかかってしまいます。ですが、そこで回数を重ねていくと、段々と現像時の手間を減らせるようになりたいと思い、そうすると撮影時に気を使うようになります。
それが、結果撮影の上達にも繋がるように感じています。
そこを逆に、現像時に何とかすればいいやって考えてしまうと、箇条書きの最後のとおりになってしまいます。
RAW現像ソフト
私が使用しているのはAdobeの"Lightroom"というソフトです(Classicではございません。)。
月額制で、数種類のプランがあるのですが、私は"Lightroomプラン"というのに加入しています。
月額980円(税別)で、Photoshopというソフトは使えませんが、1TBのクラウド容量が有り、現状はこれで満足しています。
プランの詳細は公式サイトのリンク貼っておきますのでご参照ください。
Lightroom CC はPC版、webブラウザ版、iOS版、Android版等が有り、私の場合は主にPCかiPadで使用しています。
PCまたはiPadにRAWデータを取り込むと、自動でクラウドにRAWデータと現像情報を保存してくれます。なので、どこでも、どのデバイスでも現像の続きができますし、旅行先でもその場で現像出来るので非常に便利です。
私の場合は、クラウド以外にPCの外付けHDDに自動でRAWデータをローカルバックアップするように設定しています。
更に、PC版であれば"元データ+設定"を手動で書き出すこともできますので、時間がある時に手動でもバックアップを取るようにして運用しています。
未だにクラウドに空き容量があるので、現状は不便していませんが、1TBでは後1年は確実に持たないと思います。追加でクラウド容量を購入することもできますが、不要なRAWデータはLightroomから細かく消すようにして運用していくとか、対処法については検討中です。
また実際に容量一杯になったらどうしたか情報共有していこうと思います。
iPad版のアプリは、当初はPCでしか出来ない機能も結構あったのですが、何度かアップデートされ、今ではほぼPC版と遜色無く使えると思います。むしろ、写真に写ってしまっている小さなゴミを画面を拡大して除去する、なんて作業は、iPadの方が私はやりやすかったりもしますので、状況に応じて使い分けています。
※Lightroomプランではなくフォトプランではありますが、Amazonで一年分をまとめ買いすることもできます。
有料のソフトでなくても、各カメラメーカーから純正の現像ソフトが無料で使えると思います。
私もRX100M5Aの時は、Capture One(For Sony)というソフトを初めは使いました。
現像自体はこれでも十分できますが、Lightroomを選んだのは、
- クラウド環境と、iPadで現像できるのが便利
- 写真の仕分け、管理がしやすい
- 一番定番の現像ソフトであり、ネットに情報が沢山ある
主に以上の理由が大きいです。
ご自身にあった現像ソフトを選んでみてください。
※ちなみにPCはHPの"ELITE X2 1012 G2"というタブレット型PCを使用しています。メモリ16GBのモデルを選択しましたので、RAW現像ではそんなにもたついたりせずに使用できています。
写真を取り込む
それでは実際にLightroomに写真を取り込んでみたいと思います。
iPadに取り込む場合はApple純正のSDカードリーダーを使います。
Lightroomのアプリを起動している状態で、SDカードを装着してiPadに取り付けます。
通常は①の画面になると思うので「続行」を押せばSDカード内の写真一覧画面が出て、取り込む写真を選択できます。
もし、①の画面が出ないか、「中止」を押して消えてしまった場合は、画面右下の「+」ボタンを押すと、②の画面になるので、「カメラデバイス」を押せば、取り込む写真選択画面に移行します。
PCの場合は、ソフトを起動して、左上の「ファイル」→「写真を追加」で、写真を取り込む先を選択できます。
明るさの調節
それでは実際にLightroomの画面を見ていきましょう。
そして、一番基本の明るさの調整をしていきましょう。これだけでも写真が大きく変わります。
この2枚はPC版の画面です。1枚目がアルバム枚の写真一覧画面。2枚目が一枚を選んで写真を現像する画面です。
今回は、2枚目の画像にある、「ライト」内の項目だけ解説していきたいと思います。全て明るさ調整に関する項目です。
※2枚目の写真の右の欄の項目ですが、普段は「露光量」などの各項目の左側に「自動」の文字は表示されていないのですが、スクリーンショットを撮ったら何故か文字が出てきました。二度撮り直しても出てくるので諦めました。普通は「自動」がないものと思ってください。
露光量
露光量は全体の明るさの調節ができます。
+にすると明るく、-にすると暗くなります。
コントラスト
コントラストは写真の明暗差を調節できます。
+にすると明暗差のクッキリとした力強い写真になり、-にすると明暗差がなだらかになった柔らかい写真になる、というのが私の印象です。
ハイライト
ハイライトは写真の中でも明るい部分だけを調節できます。
例えば、空が写っている写真でハイライトを下げてみると、空の色がより濃くなったり、雲の形がよりはっきりしてくることが多いです。
シャドウ
シャドウは写真の中でも暗い部分だけを調節できます。
暗く見えづらくなっちゃっているなという部分も、シャドウを上げてみると、はっきり見えるようになることもあります。
白レベル
白レベルは、ハイライトと似ているのですが、明るい部分の中でも"特に明るい部分"のみを調節できます。
私は写真の中で特に眩しさを強調したい、抑制したいという時に使うことが多いです。
黒レベル
黒レベルは、シャドウと似ているのですが、暗い部分の中でも"特に暗い部分"のみを調節できます。
シャドウを上げると暗い部分が全体的に明るくなるのですが、黒い色も薄くなってきてしまって、締まりの無い写真になってしまうことがあります。私はそのような時に少し黒レベルを下げる、という使い方をすることが多いです。
実例1
文章じゃわからないと思うので、写真で見ていきましょう。
非常に日差しが強かった日の写真を選びました。白い体毛は毛の質感が無いくらい真っ白に、耳や目のあたりはかなり暗く写ってしまっています。
白黒の差がきつく、ちょっとホラーな顔になってしまっているなと私は感じました。
まずハイライトをグッと下げてみました。右手やお腹あたりの毛の質感がわかりやすくなったのではないでしょうか。
次にシャドウをグッと上げてみます。耳や目の周りの様子がわかるようになりました。
※ちなみに私はシャドウを100まで上げ切った写真が、何となく好きじゃないことが多く、グッと上げる場合も100までは上げ切らないことが多いです。微差ですが。
これだけでもかなり写真が変わったのではないでしょうか。
初めの頃で良くわからない場合は、ハイライトとシャドウを触ってみるだけでも十分だと思います。
ややこしくなってしまうので詳細は省きますが諸々調整して、自分なりの完成形がこちらです。
ハイライトとシャドウを弄っただけの時より、もう少しだけ雰囲気を柔らかくしたいと思い色々弄りました。
※今回一切触れていない、「彩度」や「明瞭度」「テクスチャ」等あちこち変えています。
実例2
2つ目の例を見てみましょう。
空が白けてしまって、建物は暗くなってしまっていると思います。
ハイライトを下げてみました。効果がわかりやすいのではないでしょうか。空が青く、雲の形も綺麗に出てきました。
ハイライトを一回0に戻し、シャドウだけを上げてみました。建物がかなり明るくなりましたね。
ハイライトとシャドウを組み合わせて、露光量で全体を少しだけ暗くしました。
当初と比べたらかなり雰囲気が変わったのではないでしょうか。
終わりに
いかがでしたでしょうか。
明るさの調節だけでも非常に効果が出て、それだけなら非常に簡単だと思えるのではないでしょうか。
その他の項目も、実際にスライダーを左右に動かしてみれば、感覚的にどんな効果があるのかわかると思いますので、体感してみるのが一番早いと思います。
Lightroom以外のソフトの場合、微妙にそれぞれの項目の言葉の表現が違うこともあるかと思いますが、同じ物を示している項目は大体あると思いますので、言葉を変換しながらお試しいただければと思います。
自分の写真が生まれ変わる感じがとても楽しいので、是非是非RAW現像に挑戦してみましょう!
コメント