スマホや安くて小さなデジカメで撮る写真と、高級なカメラで撮る写真の何が違うのか。
色々ありますが、一番言われるのは"ボケ"ではないでしょうか。
レンズのレビュー等を見ると、「よくボケる」「ボケが美しい」「ボケがうるさい」等々ボケに関するコメントをよく見かけるかと思います。
カメラ未経験者や初心者の方に向けて、そもそもボケとは何か、またボケやすくなる条件・要素などを何となく理解できるよう、できるだけ具体的な写真を見せながら説明していきたいと思います。
ボケとは?
簡単に言うと、ピントが合っていないぼやけて写っている部分のことです。
スマホ(今は合成で作るポートレートモード等はありますが)や安いカメラでは、普通に撮っているだけでは全体的にピントが合うことが多く、なかなか認識できないものではないでしょうか。
細かい理由は後述しますが、高い本格的なカメラになるとピントが合う距離の範囲(被写界深度)が狭くなり、ピントが合わない部分がなだらかにぼやけていくのが目に見えてわかるようになります。

ピントが合っている目がくっきりと写り、手前の鼻や耳はボケているのがわかります。
撮影したカメラは、SONYのフルサイズミラーレス一眼カメラのα7Ⅲです。
※写真の下に記載している数字は撮影時の設定です。それぞれの意味がわからない方は下記記事も併せてご覧ください。
ボケが生じることで、ピントが合っている部分が写真の主役であることが明確になり、主役をより引き立たせることができます。
人間は写真を見た瞬間、まずピントが合っているところに目がいくようです。肉眼で一点を凝視する時と同じような感じになるんですかね。

手前に大きな花のボケ(前ボケと言います)がありますが、ピントが合っている犬が主役(主題と言います)というのが説明しなくても伝わるのではないでしょうか。

主役以外の背景がボケることにより、被写体が浮き上がって見えてきます。
正直カメラを買う当初はそんなにボケ自体には興味が無くて二の次、と思っていたのですが、気づいたらどんどんボケを求めるようになっていました(笑)
ボケに影響する要素
ボケに影響する要素は、主に以下のものがあります。
- カメラのセンサーサイズ
- レンズの焦点距離
- F値
- カメラと被写体との距離
- 被写体と背景の距離
これらによってボケやすさ、ボケる量が変わってきます。

このように、センサーサイズが大きいほど、レンズ焦点距離が長いほど、F値が小さい(開放)ほどボケやすくなります。
更に、撮影する際は、カメラが被写体に近づくほど、被写体と背景が離れるほどボケやすくなります。
以下、一つ一つ画像と共に説明していきたいと思います。
センサーサイズ
デジカメにはイメージセンサーというものが付いています。
光の情報を取り込むデジカメの要となる部分で、これが大きくなるほど画質が良く、そして高額になる傾向があります。
センサーサイズの大きさの差の目安が下記の図になります。

※各サイズは大体規格で決まっているみたいですが、例えば"APS-C"ではCanonだけ少しサイズが違ったりとメーカーによって差異があることもあるみたいです。ややこしいのでその辺は割愛しました。
スマホや安いコンデジのセンサーが一般的に1/2.3型です。α7Ⅲ等のフルサイズセンサーとは全然大きさが違うことがわかります。
また、高級コンデジの入口ともなる1型センサーでも、1/2.3型の数倍の大きさがあることがわかります。
私は"1型サイズ"と"フルサイズ"、更に図には記載していない"1/1.7型"(スマホと1型の中間)のカメラを所有しておりますので、それぞれのボケ感を比較してみたいと思います。



小さいセンサーサイズから順に写真を並べています。できるだけその他の撮影条件は揃えたつもりです。
中央の犬にピントを合わせ、前後の犬のボケ具合が変わってきているのがわかるかと思います。
1/1.7型ではよく見るとボケているのがわかる程度、フルサイズでは表情もわからないくらいボケていますね。
このように、センサーサイズが大きいほどボケは大きくなります。
レンズ焦点距離
次にレンズ焦点距離です。
焦点距離が長く(望遠レンズに)なるほど、ボケ量が大きくなります。


1枚目が焦点距離55mm、2枚目が135mmで、どちらもF値は1.8で撮った写真です。
55mmのほうは背景のディティールを残しながらボケていき、135mmは背景の形が溶けてしまうほどボケているのがわかるかと思います。
また、焦点距離400mm等の超望遠レンズでは、例えF値が5.6などでも、焦点距離が長いので十分にボケます。


1枚目がF値5.6の写真です。海や流氷がなだらかにボケているのがわかります。
2枚目はF値を16まで絞っております。焦点距離50mmくらいのレンズでF値16まで絞って風景を撮ると、手前から奥まで全てピントが合った写真が撮れますが、400mmでは一番手前のオオワシ以外は微妙にですがボケています(小さい画像じゃわかりづらいかもしれません)。

逆に焦点距離17mmという超広角のレンズでは、被写体に目一杯寄って撮った場合でも背景が溶けるほどのボケは得られません。限界までぼかそうとしてこれくらいの感じです。
焦点距離によるボケの違いがおわかりいただけましたでしょうか。
F値
次にF値(絞り)についてです。F値って何?という方は下記記事をご参照ください。
F値による違いは先ほどのワシの写真でも結構わかりやすいかもしれませんね。



同じレンズ、同じ位置でF値のみを変えて撮った写真です。
F値を小さくする(絞りを開く)ほど、ボケが大きくなるのがわかります。
被写体や背景との距離間
撮影時に一番気にするのがここです。
特に広角レンズを使うときや1型センサー等で撮る時は、距離感を意識しないとはっきりとぼかすことが難しくなります。

1型センサーでも被写体(顔)を大きく写せば、身体は若干ですがボケてきます。

このように、被写体を大きめに写し、背景が遠くに抜けていくような場面であれば、1型センサーでもボケているなとわかる写真を一応撮ることができます。
そして一番被写界深度の浅さが伝わりやすいのが、フルサイズセンサー機でのマクロ(接写)レンズによる写真だと思いますのでご紹介します。
レンズの目の前に置いた物もピントを合わせて撮れるマクロレンズは、被写体に接近して撮ろうとするとピントが合う範囲が数ミリくらいしかありません。

水滴と葉脈の一部だけにピントが合い、他はボケているのがわかります。

昆虫苦手な方は申し訳ございません。
この写真では、まずトンボの羽を見ることで被写界深度の浅さがわかるかと思います。
更にweb上ではわかりづらいかもしれませんが、この写真は拡大して見ると、口の部分にピントが合っていて、複眼の部分は若干ボケていることまでわかります。
そして背景の赤い色合いですが、これはトンボが止まっている赤い花と同じものが周辺に生えていて、それが背景になっています。
ここまで被写体に近づくと、花の形などはボケて完全になくなってしまい、色の情報だけが写っています。
このように強烈にボケる環境では、色合いだけで背景を選んで楽しむこともできます。狭い範囲でも数ミリ角度を変えるだけで色々な色が写りこんだりして楽しいです。
とにかく近づいて撮ればボケる、背景を遠くにすればボケるということはご理解いただけましたでしょうか。
以上がボケに関する主な要素となります。
ボケってそんなに大事?(一眼カメラ購入前に思っていたこと)
ここまで、ボケについて細かく説明し、語ってきました。
しかし、カメラ未経験や初心者の方はこう思うこともあるのではないでしょうか。
「ボケってそんなに大事なの?」と・・・。私が実際にそう思っていました。
カメラにあまり興味がなかった頃は写真のボケを意識して見ることもありませんでしたし、意識したことが無く身近な物ではなかったので、逆にボケ過ぎている描写には違和感がありました。
また、1型のカメラを買った時では、一応ボケるにはボケるけど、特に感動もしませんでしたし、逆にピントが合いづらくなり、注意しないと失敗写真が増える等々、カメラを持ちだす頻度は増えませんでした。
そうすると必然的に旅行やイベント事にしかカメラは使わず、そうすると集合写真や観光地での撮影がメインになりますので、増々ボケたら困るということで、ボケが重要とは思っていませんでした。
実際、初めてフルサイズミラーレス一眼を購入した時も、ボケ過ぎる描写に違和感を感じ、またレンズも高額になるのでF1.4のレンズは不要と判断して55mmF1.8のレンズを購入しました。
だったのですが、いつのまにか背景が溶けるほどにボケる135mmF1.8というレンズの虜になり、最近では50mmF1.4のレンズも購入しました(笑)

なぜなら、背景がわからなくなる程ボケるというのは、日常使いに最高だと気付いたからです。
旅行先でこれだけボケてしまうと何処に行ったのかもわからず困ってしまいますが、日常の全然大したことない景色でも、「いつもよりほんの少しだけ空の色が綺麗だった」というような僅かな違いを捉えて、良い部分のみをクローズアップしてくれることがわかったのです。
このことがわかったおかげで、日常的にカメラを使うことが楽しくなり、結果カメラにドハマりすることになりました。
ということで、現在の私の意見としては、「ボケは非常に大事である」となりました。
カメラ好きな方でボケがどうでもいいという方はほとんどいないんじゃないですかね。
実際にカメラを触って撮って見ればわかるということです(笑)
まとめ
何となくボケ量やボケ方の違いがおわかりいただけましたでしょうか。
最後に、ボケる要素についておさらいしますと、
- カメラのセンサーサイズが大きいほどボケる
- レンズの焦点距離が長い(望遠レンズ)ほどボケる
- F値が小さい(絞りを開く)ほどボケる
- カメラと被写体との距離が近いほどボケる
- 被写体と背景の距離が遠いほどボケる
以上となります。もうこの記事内で何回ボケボケ言ってるんでしょうかね(笑)
高額なカメラを買ったことがなく、ボケを体験したことが無い方は、まずは是非一度実際に触って体験してみてください(できればフルサイズセンサー機を)。
よくカメラを手にすると撮りがちですが、身近なコップや葉っぱ等を特に何も考えずに撮って見てください。
フルサイズ機であれば何も考えなくてもピント部以外はかなりボケてくれて、それだけで最初はテンション上がると思いますよ。
ピントが合う範囲が狭いから難しそうと思う方もいるかもしれませんが、カメラのピント合わせ機能の進化は凄まじく、最近の機種ではボタンを押すだけで、動物の顔を認識し、動物の瞳にピントを合わせてくれます!
当然人間の瞳にも合わせてくれます。その機能があったからこそ私も購入に至りました。
※最近のカメラ(α7Ⅲ)の機能について、詳しくは以下の記事で紹介しております。
繰り返しになりますが、少しでもカメラに興味がある方は是非体験してみてください。
時間は戻ってきませんからね。もし、遅かれ早かれカメラを買うことになるのであれば、少しでも早く手に入れて撮影機会を逃さないということがなにより大切だと思っております。
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